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偽島と堕島のキャラブログ
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ぶらり、銀の狼は人気のない山奥を散歩をする。
最近すっかり開拓というものが進み、
人の里が山を切り開くせいか獲物の数は年々減っている。
そんな山の現状を知る昔なじみの男は、顔を見せる度に
敷地内の山に越さないかと申し出ては呉れるものの、狼にその気は無かった。

今日の獲物は鹿だ。久しぶりの上ものににんまりと口元が上がる。
肩に担ぐ獲物の重みが狼の笑みを誘う。

住処にしているあばら屋への道、
草鞋は土を踏み締め、軽快な足取りで急な傾斜を登る。
地を蹴る度、帯に差した小太刀に付いた鈴がころころと鳴った。

傾斜を登りきれば、木々の間から住処を見下ろせる。
あとは坂を下るだけ。獲物を担ぎ直して汗を拭い見上げる空。
漆黒の鴉が一羽ついと円を描いたかと思えば、
狼の元へとすべるように降りてきて、肩に止まった。
噂をすればなんとやら、暇を見ては顔を出し、
やれ山に来ないか、やれこんな仕事をしませんかと
退屈しのぎの代わり、面倒ごとを遣す男からの使いだった。
先ほどまでの上機嫌は何処へやら
へにゃりと狼の口元が下がる。

「あー、なんじゃ。有馬の式か、なんぞまたやっかい事かのう。
退屈しのぎを遣せとは言うたものの、あれの仕事は手順が面倒でいかん」

ぼやきながらも、鴉の足に括られた文を解き、空へ返せば読みはじめる。
手紙には、とある島への招待状が添えられていた。


”これは日々退屈を感じている諸君への招待状。それは不思議な島の遺跡。
島を出れば遺跡で手にした財宝は消える、しかし七つの宝玉があれば消えない、宝玉は遺跡の中。
島はエルタの地より真南の方向、素直に信じる者だけが手にできる財宝
―――胡散臭いですかなっ?
ククッ・・・疑えば出遅れますよ、パーティーはもう始まっているのです。”


『――とまあ、胡散臭いのは折り紙つきのようですが、
退屈凌ぎにはなるでしょう。
私は忙しいので代わりに行ってみませんか?

有馬和道 』

達筆な文字と簡素な内容。
狼は手紙を懐に仕舞い、住処に戻るまでの間悩んではみたが
結局のところ、退屈は退屈なので引き受ける事にした。
普段、街まで降りる仕事は洋装だの擬態だの色々と強いられるが、
今回は別段なにをせずとも良いという事がなにより気楽だった。

住処に戻り、新鮮な獲物をたらふく腹に詰め一眠り。
夜が明ける頃には着の身着のまま住処を発つ。
さわり、朽ちかけたあばら屋の庭で桜の枝葉が風に揺れる。
春が過ぎ新緑の茂り始めた桜の木を振り返る。

「んじゃぁ、ちいと行ってくる」

一声かけて狼はぶらり歩き出す。
葉を茂らす枝の中にひとふりだけ満開の桜。
はらり散った花びらひとひら、苔むす墓石にふわりと落ちた。
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