記録 No.2

がきぃぃぃぃん！！

――――刀と爪が弾き合う

振り上げた腕は鞘に弾かれそのまま飛び退いた。

[　ちりんと鈴が鳴る　]

くつり笑みを浮かべて狼は上体を起した。
はらはらり、桜が舞う。差し向かうのは道楽な名を持つ桜の男。

「よぉ…桜の。ワシじゃ。また逢うたなぁ。
んー、なんぞまあ、けったいな連れじゃのう。
ちびっこに……その後ろにおるのは小鬼か？
妙な獲物を持っておるがまあ良い。
遊び相手が増えるしの、ひとつ肩慣らしに付き合え」

鋭い爪で顎を撫ぜ、狼はまじまじと桜の一行を眺める……
振りをしつつチラリ。後から追いついてきたロゼを横目で見た。
金色の瞳がすいと細まり孤を描く。

「ふはは、肩慣らしのついでに流れ弾にでも当たってくたば……」

と、不穏な事を心の中で呟きかければ……
実際の所、気づかず口に出していたわけで。

＞首輪の制約その2
【主人に牙を向ける】→【適用】

「――――ぬああああああ！？」

首　が　絞　ま　る　！！！！！！！！！
首元でなにやらうそら寒い気配がしたと思えば
ぴったりと肌纏わりつきじわじわと狭まる首輪。
ああああああ！？
ちらちらと虫が飛んで、視界が黒く―――

ふっと落ちかける意識に首輪もふっと緩む。

「……っ女ァ！　ワシを殺す気か！」

＞首輪の制約その2
【主人に牙を向ける】→【適用】

[　――しばらくお待ちください――　]

狼は地に這い蹲ったまま口を尖らせた。
よこしまな事を考えるからよと窘められたのが気に入らないらしい。
マイペースに歩いてきたユリウスが、きょとんとしている間。
何食わぬ顔で狼はくるり、飛び起き埃を払う。

「くそう、胸糞悪いのじゃ。
桜の！　肩慣らしのついでじゃ、鬱憤晴らしにも付き合え」

こきり、首を鳴らして腕を回す。
ゆるりと瞬けば金色の瞳は桜を映し、言に反して口元に浮かぶ笑み。


[　ザァァァ―――…　風が花を攫う　]


[　―――合い向かうのは、懐かしき隻眼の―――　]